花霧妖夢02:Spectergraph 薨




「なぁ」
 何ですか霧雨さん。
「イヤな言い方だな。呼び捨てで良いのに」
 そんな訳には参りません。貴女は私の主人に招待されなさった客人。私奴如きが対等な口を利こう等、考えただけでも恐れ多く存じます。
「丁寧語の方が無礼ってパターンもあるぜ?」
 う。
 ひょっとして無礼ですか私。
「別に。ただ、あんまり敬語は好きじゃないんだよ」
 好きくないのですか。
 努力して改善すべきなのですか。
「しろ。少なくとも私には」
 頑張ります。
「いきなし失敗してんぞ……『頑張る』、だろ」
 あ。
 う、あの、その。
「まぁ良いや。他に訊きたい事があるし」
 なんでしょう霧島さん。
「お前は誰よ?」
 私――ですか。
「そして、なんで私のことを知ってるんだよ? 此処は何処だよ? なにをお前はしているんだよ?」
 あの。
 質問は一度に一つでお願いします。口も頭も一つしかないのです。
「まぁそりゃそうだな。たぶんお前は人間だろうし」
 違います。
 私は半人前です。
「いつもご飯を残すのか?」
 どんぶりめしオンリーです。
「そりゃあ、ちょっと……地味というか偏ってるというか」
 修行なのです。
「どこぞの馬鹿に聞かせてやりたいぜ」
 なぜ笑うのですか……。
「面白いからさ。お前ももうちょっと笑えよ」
 ……。
 訊きたい事はそれだけですか?
「怒るなよ」
 怒ってません。
「なるほど、怒ってないんだな」
 もちろん怒ってません。
「これからどんな質問をされてもきっちり返答してくれるぐらい平静なんだな」
 絶賛、怒ってません。
「じゃあ訊くぜ」
 はい。
 
「なんで私の体は透けてるんだ?」

 幽霊だからです。
 いや、正確に言えば……死んだからです。
 もっと精密に云えば――殺されたからです。私の主に。





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